ホーチミン市 3
 
           聖マリア教会             戦争証跡博物館



















 戦争証跡博物館は、人で溢れんばかりだった。中には武器や写真、監獄、ギロチンなどが展
示されていたが、あまりにも痛ましくて正視できない写真が何枚もあった。

 輸出・輸入の税金が免税されている工業団地内の日本企業を、連日何社か訪ねた。どこの
会社も注文が増えて、相当忙しいという。これからはベトナムだと、数年前に大きな工場を作っ
て進出した企業の中にも当然、失敗した企業もある。業績の良い企業が、そういう負け組企業
の敷地と従業員をそっくり買い取って、成功している会社も多いそうだ。
 どこでも質のいい人間を雇うのに躍起で、学生の頃から目をつけ奨学金を払って応援してい
ても、金を返すから辞めさせてくれ、と高給な IT企業に鞍替えする学生が増えていると、苛立
たしそうに語る経営者もいた。大学卒で通常12,000円ぐらいの給料なのに、IT企業の給料
は300US$(36,600円)だというから、無理はないかもしれない。反面、高卒、23、4歳の女
性の給料は約8,000円ぐらいが平均だそうだ。
 
 ベトナムはベトナム共産党大会で、資本主義や私人経済をいたずらに敵視せず、むしろ資
本主義を積極的に導入して、今までの社会主義のあり方を大幅に刷新(ドイモイ)することを決
定して、ドイモイ政策を積極的に進めてきた。しかし、いまだに企業は搾取者との考えが根強く
残っていて、労働者として一致団結するしようという傾向が見られるそうだ。

 2月7日、予定のことをすべて終え夕食を取ってから、9時半に空港に行った。出発が11時
55分である。帰りはジェット気流に乗るので成田まで5時間半である。離陸後、うとうとしてひょ
っと下を見たら、ネオンが煌々と輝く街の上を飛んでいた。あまりにものきれいさに寝ぼけ眼で
見ていると、「台北上空です」と、客室乗務員が通りすがりに教えてくれた。すぐに見覚えのあ
る台湾の最北端を通り過ぎて、すぐ真っ暗な海になった。
 うとうとする間もなく、離陸してから4時間もしないうちに朝食。食べられない。7時20分。飛
行機は定刻通り、成田に到着した。3日後に、今度はスペインへ8日間の観光旅行である。ベ
トナムの食事は合ったし、毎晩ぐっすり眠ったので疲労は残っていない。スペインへは元気で
行けそうだ。何故か、いい人たちと出会いそうな予感がした。     ( 完 )

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