最後に
 
 世界3大名画と言われているエル・グレコの最高傑作「オルガス伯の埋葬」を見るためにサ
ント・トメ教会に行った。20数人の人たちが見守る中を二人の聖人が、鎧を身につけたオルガ
ス伯の遺体を、優しく抱き上げようとしているところを描いたものである。
 画面は上下二段に分かれ、上部に天国、下方に現世を描き、天国には聖母マリア、ヨハネ、
イエス・キリスト、ペテロ、ノア、モーゼ、ダビデなどが描かれ、現世には当時の多くの著名人が
描かれている。カトリックではどんな人間でも天国に昇るには、必ず煉獄で罪を清めなければ
ならないのに、この絵では埋葬されたら即天国で生まれ変われるんだということを、描いたの
だそうだ。キリスト教にはまったく無知である私には、この絵の言わんとする所はよく理解でき
なかったが、赤と黄と黒を基調にした色使いは素晴らしいと思った。

 スペイン人気質
 権利は主張するが、義務は果たさないそうだ。それに遊び好きで、若者たちの間では午前1
時、2時集合なんてざらで、マドリッドでは午後10時を過ぎているのに、乳母車に幼児を乗せ
た若い夫婦や小さな子供連れの家族が、ぞろぞろ歩いていた。ちっとも眠くなさそうなので、十
分に昼寝させたのだろう。これからレストランに食事に行くのだそうだ。

 スペインはブドウとオリーブだけの国だろうと思っていたが、かつては世界の大国だった面影
があちこちに残っていた。到る処に広い舗装道路が縦横に走り、8〜9階建てのアパートが林
立して、街並みは整然としてゴミも落ちてなかった。コロンブスもスペイン人であり、ゴヤやピカ
ソなどの画家、建築家のガウディーを輩出した美の国でもある。マドリッドにあるプラド美術館
には、あと2時間ぐらいゆっくりしていたかった。回教とキリスト教文化が融合しているのも魅力
で、アルハンブラ宮殿、古都トレド、メスキータは素晴らしかった。
 どのホテルにも、便器の横に長方形の手動ウォッシュレットがあった。お湯と水の栓をひねっ
て温度を調節した後、蛇口の上にしゃがんで尻を洗うのである。ヨーロッパではこの手動ウォッ
シュレットがあるホテルは稀だったが、スペインではどのホテルにもあった。

 マドリッド発10:00の飛行機でヘルシンキへ4時間半。ヘルシンキで約2時間待って、成田
着が約10時間後の17時20分だった。着いた途端、無性に熱燗で寿司を食べたくなった。
 ただ一つ残念だったのは、シーズンオフのためにあの熱狂的な闘牛場の中に身を置けなか
ったことで、開催されるのは4月初めから10月12日の毎日曜日だけだそうだ。一緒に旅をし
た方たちともすぐ仲良くなり、とても楽しい旅だった。再会を期待して別れた。

               アルハンブラ宮殿で美人ガイドと

 

   








トレド                                        スペインへの旅