はじめに

 同じ会社で働いていた三浦さん、植田さん、湯川さんの4人でオーストラリア旅行に出かけ
た。三浦さんとは昨年台湾旅行に出かけたので一年ぶりの再会だったが、湯川さん、植田さん
とは私が退職してから8年ぶりである。顔を見た途端、長い空白期間が一気に埋まった。特に
三浦さんは、神戸からの参加。「友あり、遠方より来たる」である。

 ツアー参加者は二十三人。人数は多くも少なくもなく、理想的。夫婦連れは三組ほどで、あと
は我々のような友人グループと母子連れ。いつも3〜4組いる女子大生グループは、今回は参
加していなかった。男4人というのはかなり不思議に思われるようで、州として同性愛を許して
いるキングスクロスに行った日の晩、3組のオバさんグループから「どういう関係か?」としつこ
く訊かれた。「友人」と答えそうになり、あわてて「元会社仲間」と答える。 

 シドニーへのカンタス航空の直行便は定刻に空港を離陸。機内は満員だった。客室乗務員
は、背中にCREWと書かれたシャツを着た50歳代と思われるむくつけき男4人。一人が「え
っ、女性はいないの!」と口をあんぐり。私も男だけというのははじめてだったが、カナダ航空
で女相撲取りまがいの70〜90kgもあるCREWとバトルを繰り広げたことに比べれば、遙か
に “マシ”である。彼らが無愛想に運んできた料理を食べ、ワインを飲んだが、味気ないことこ
の上ない。お代わりをされるのが嫌なのか、食事を下げてからほとんど廻っても来ない。食べ
た後、いつまでたってもトレイを片づけないので、三浦さんがしびれを切らして片付けてくれと言
ったら、すまなそうな表情も見せず、忘れていた、とシャーシャーと運んでいった。

 途中、飛行機はかなり揺れたが、定刻の午前7時、真冬のシドニー空港に無事到着。真冬と
言っても、日本の10月末頃の陽気である。スーツケースから厚めの長いシャツを取りだして薄
いジャンパーの下に羽織る。湿気のない肌寒さが、寝不足でぼおっとした体に爽快だった。

 約10年ぶりのシドニーはほとんど変わっていなかったが、キングスクロスは街全体が随分寂
れてしまったような気がした。ここには世界各国から同性愛者が集まってきているそうで、男同
士で手をつないでいるカップルが時々目にとまった。

 現地ガイドはオーストラリア人気質について、こう語った。
「年金は何年か働けば貰えるし、3日以内なら入院してもタダである。家賃も安く、18歳まで公
立学校の授業料はタダ。その代わり税金が高く、年収が400万円もある人は、その40%が税
金としてもっていかれる。週給を1週間で残さず使ってしまい、貯金もしない。こせこせ働くこと
を嫌い、先のことをあまり考えない人たちである」

 シドニーの中心部はそう広くなく、ハイドパークを中心に半径1kmの中にほとんど入ってしま
う。4人でホテルからロックスまで、散策に行った。ロックスはシドニー発祥の地だそうで、石造
りの倉庫を改造した店が多く、いかにもオールドタウンという感じの街である。次ページのよう
な屋台がぎっしりと並んだマーケットには装飾品などが売られていて、一歩横に入ると落ち着
いたカフェやレストランが並んでいる。そんなカフェの庭先にあるテーブルに座り、椰子の木に
寄ってくる野鳥の声を聞きながらのんびりとコーヒーを飲んだ。

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